1724 不当な解雇・雇止め-労働者の復職のための法的手段は中々厳しい??

最高裁判例を見ると,これぞ労働者の味方だ,と言えるものもままあります。

ただ,実際問題,労働者の復職は,というとかなり厳しいものがあります。
①労基署のあっせん
これは,結局,裁判所の調停のようなものですので,相手方の会社等には,あっせん手続への出頭強制は働きません。
つまり,相手方の会社等があっせんに出て来てくれないことが多く,何もなされないまま,手続は終了してしまいます。
(証拠提出強制も働きません)

②労働委員会の仲裁等
中立公平を謳い,また協議を申し込んでくれるとのことですが,
中立公平ですから,相手方会社等に踏み込んでくれるとかはなく(労働者への肩入れはしない?)
①のあっせんと同じく,出頭強制はありません。
(証拠提出強制も働きません)
ってことは,相手方会社等が委員会の出頭要請に応じなければ,やはり何も起こらずに終わる可能性があるということです。
相手方会社等にとって,出頭しないことに不利益処分がない以上は放置するのではないでしょうか。

    不当に解雇・雇い止めにあった労働者の方が間違うのが,
    労働委員会は「不当労働行為の是正命令を出してくれる」という言葉尻を見て,
    不当な仕打ちを受けている自分は,あたかもそれに遭っていると勘違いして,如何にも頼もしい存在だと誤解されることがあるようです。

    しかし,不当労働行為とは,労働組合に加入したりその活動をするなどしたが故に解雇された場合,つまり労働組合法7条違反の場合です。その場合に是正命令等ができるだけです。
    労組がそもそも存在せず,それにおよそ入れもしないような,か弱き労働者が,それで救済してもらえるわけではないのです。
    →後注3)

③裁判所の労働審判
労働者側が、絶対現職復帰、金銭解決の余地はないと考えるときは労働審判には向いていない旨裁判所は言い続けてるとのことです。
しかも労働者側が労働審判を申し立てると、裁判官(労働審判委員会)も使用者側も労働者が口先では復職を言っていても本音は金銭解決だと踏んできますので,復職を求める方には向かない裁判と言われています。

④労働者の地位保全の仮処分
これは大いに期待できた時期もかつてはあったと記憶していますが,
ただ最近は,地位保全の仮処分は,保全の必要性がないとして,不当解雇・不当雇い止めであっても,却下する可能性が高いようです。
とりわけ不当解雇等から時間が経っていると特にそうなります。
なお,賃金支払仮処分の場合についても,保全の必要性判断はこれと似ていて,解雇や雇い止め等から時間が経っていると,生活が成り立っていたはずだとして,保全の必要性をなかなか認めようとはしません。
どんなに遅くとも解雇・雇い止めから2か月以内に保全を申し立てるべきでしょう。
→後注)

⑤民事訴訟(労働事件)
これが最もオーソドックスな手段に結局なります。要するに①から④によれば,復職を求める場合はこれが事実上の1択ということかもしれません。
民事訴訟ですので,事実上の出頭強制が働きます。
欠席すると労働者勝訴判決が下りるからです。
ただ,もう一方で,証拠提出の強制力はありません(文書提出命令が出ても,のらりくらりかわすやり方はある。また仮に出してきても新しく作り直した捏造証拠を出してくることもある)。→後注2)

    しかも私の若い頃と違って,現在は,相手方会社等における問題児らを証人尋問等に呼ぶとしても,裁判所はタイムリミットを設けます。僅か30分くらいしか尋問させてくれません。以前は優に1時間以上,反対尋問させてもらっていました。
    すると,もし前記証拠を出してもらえない中で尋問に突入しても30分の尋問で相手方会社の嘘を暴くのは至難の業になります。
    何故なら,30分間の尋問時間なんて,のらりくらり適当な言い逃れをして時間を稼げば,直ぐに時間切れです。

あと,労働者の復職の訴訟提起となると,その弁護士費用,つまり着手金は,従来の弁護士報酬基準によれば,40万円~50万円くらいになると思います。
もちろん,今では,法テラスがあるので,これを使えばよいですが,訴訟単体でも20万円程度にはなるのではないかと思われます(前記解雇早々の事例で保全申立てを含めると,やはり30万から35万円は覚悟すべきようです。※難易度によって金額は変わります。)。


    後注2)
    なお,以上のほかに,労基署に証拠提出を働きかけられないかという案もありますが,未払賃金の事件のように,労基法違反の事案であれば労基署に正式に頼めばやってくれますが,労働契約法違反の問題,つまり解雇や雇い止めについては,労基署は相手方会社に踏み込んではいただけないとのことでした。
    ・・・・私個人的には,未払賃金の事例のように,これができれば,その後の展開は極めて有利になると思い,最も期待していたのです。
    というのも,同じ資料を相手方会社等から戴く場合でも,民事裁判での文書提出命令のによって提出してきた場合のように全く新しく作り直した書類ではなく,労基署が素速く踏み込んでくれて,元々作られていた書類が取れると,全然証明力が違うのです。
    しかし,このような事例では,踏み込んで資料を取ってくることは,難しいとのことでした。本当に残念です。


    後注3)
    労働委員会が是正命令を出してくれる不当労働行為とは,以下のとおり。

    1 組合員であることを理由とする解雇その他の不利益扱い
    (1) 労働者が
      労働組合の組合員であること
      労働組合に加入しようとしたこと
      労働組合を結成しようとしたこと
      労働組合の正当な行為をしたこと
    を理由に、その労働者を解雇したり、その他の不利益な取扱いをすること。
    (2) 労働者が労働組合に加入せず、又は労働組合から脱退することを雇用条件とすること。
    2 正当な理由のない団体交渉の拒否
      雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを、正当な理由なく拒むこと。
    ※使用者が形式的に団体交渉に応じても、実質的に誠実な交渉を行わないこと(「不誠実団交」)も、これに含まれます。
    3 労働組合の運営等に対する支配介入及び経費援助
    (1) 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、又はこれに介入すること。
    (2) 労働組合の運営のための経費の支払いにつき、経理上の援助をすること。
    4 労働委員会への申立て等を理由とする不利益取扱い
      労働者が労働委員会に対し、不当労働行為の救済申立てをしたこと、若しくは中央労働委員会に再審査の申立てをしたこと、又は労働委員会がこれらの申立てに関し調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言したことを理由として、その労働者を解雇し、その他不利益な取扱いをすること。

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