1509 自ら掛けたスポーツ保険金を受領すると,不法行為損害賠償額が減額されるか(損益相殺の可否)

学校でのスポーツ事故や交通事故等の不法行為により加害者に損害賠償請求するについて、別の保険金を受領したことにより、不法行為の相手方に対する損害賠償額が減額されるか。

つまり,保険金受領と損益相殺の成否の問題です。

それは受け取る保険金の種類によって異なる。

    1 生命保険・被害者が加入している傷害保険
    自ら生命保険金をかけていた方が亡くなり、遺族に生命保険金が支払われた場合、損害賠償額から控除されることはない(最判昭和39年9月25日)
    元来生命保険は、被害者(被保険者)が自ら掛け金を負担して、事故が生じた場合に保険金を受け取るもの。賠償義務者の債務が減額されれば、この保険の利益を加害者が受けることは不当だから。生命保険に付帯している傷害・入院給付金、被害者が加入している傷害保険による給付も同様。

    2 労災保険
     交通事故が同時に労災事故であった場合には、被害者は、労災保険による給付も、自賠責保険を中心とした自動車保険による請求も選択的に使用できるが、労災保険から支給された給付については、損害賠償額から控除されるのが原則。
     労災保険の支給のうち、療養給付のような医療関係の支給は、損害賠償でいえば治療費などの損害費目に充当される。労災保険から支給された休業補償、後遺障害による障害補償給付については、損害賠償の休業損害、後遺障害逸失利益に充当される。
     他方,労災保険の給付中、被害者に給付される特別支給金については,休業補償給付のように保険者の代位を認める本来の損害填補性はないため、損害賠償額に充当されない(最判平成8年2月23日)。
    なぜなら,労働者の損害の補償という面ではなく、労働福祉事業という側面労災被害者に給付される性格のものだから。

    3 国民年金法・厚生年金法・公務員共済組合法による障害年金給付
     後遺障害逸失利益との関係で問題になりますが、現実に支払いを受け、支払いを受けることが確定した分について損益相殺される(最判平成5年3月24日判時1499号49頁)。
    これは、労災での障害年金も同様。

     将来給付分については、給付額が不確定であるため,支給が確定した段階で決定。

    4 介護保険
     今の損害賠償の金額で大きな割合を占めるのが、高次脳機能障害などにより、日常生活に介護を要する場合の介護費の支払い。
     介護保険の被保険者は、交通事故の被害者の場合65歳からです。
    この介護保険の場合も基本的には、4でご説明した、給付の確定した限度で、損害賠償額から控除するのが実務の運用。

    5 所得補償保険
    損害賠償でいえば休業損害に該当するのですが、実務的には、所得補償保険は、損害塡補性をもつとして、損害賠償金と損益相殺され、賠償金はその分減額される
    。(最判平成元年1月19日判時1302号144頁)

    6 搭乗者傷害保険
    搭乗者傷害保険金は、自動車に同乗する機会が多い、親族・知人など同乗者を手厚く保護する保険として損害填補性を有しないとされ、損益相殺できない(最判平成7年1月30日判タ763号256頁)。

    ただ,搭乗者傷害保険金を受領した場合、慰謝料の算定では考慮できるとの下級審裁判例あり。もっとも最高裁の判例はない。
    下級審の多くは慰謝料で斟酌することをは認め,その斟酌の程度は、本来の慰謝料から受けた搭乗者保険の2割から3割程度を減じたものを慰謝料と算定するのが通例。


【学校でのクラブ活動事故と自ら掛けた保険金】
以上によれば,学校のスポーツクラブに所属している生徒について,
学校から言われて,その親が保険金を掛けていたところ,
その生徒が,クラブ活動中に別の生徒のせいで事故に遭った。

この場合,被害者の生徒が自ら(親がが)保険をかけていて,そのお金が下りたからと言って,
怪我を負わせた生徒の損害賠償責任が減額されるということはなさそうです。

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