1461 家事事件の難しさ・・・・現在進行形,未来進行形

弁護士にとって,実は中々シビアな事件は,
なんといっても,家事事件だと思います。

家庭内の身近な事件なので,そもそも証拠が残っていないことも多く,依頼者及び弁護士の悩みは相当に大きい。

専業主婦の場合等,そもそもお金がない場合(そう仰る例)も極めて多い。
(例外は社長夫人とか,医者の妻とか?
・・・・でも彼女らは陰で処理されるので普通事件として顕れない。)

身近な問題だけにむしろ切実であり,関心が高いので,
弁護士に対する要求は,細かく,かつ多い。

    法テラスや弁護士会でも,弁護士に対する苦情が多いのは家事事件です。

    家庭裁判所でも,都会になると,家事調停は苦情がやたら多いそうです。
    ・・・・やはり関心の高さと切実さの故だと思います。
    調停委員の一挙手一投足さえ,気になるのかもしれません。
    家庭裁判所では,次席書記官という,事務方のナンバー2が毎日苦情対応に追われます


【家事事件が難しいわけ・・・・現在進行形・未来進行形】
そもそも家事事件は,民事・刑事事件以上に,千差万別であって,
すべての事件が違いますので,弁護士の過去の経験値がそのまま役に立つことはより少ないと思います。

そして,その上で家事事件の難しさの根本原因は,
過去の問題であることに加えて,現在進行形,未来進行形でもあることです。

    例えば,刑事事件の処理は,過去の事件の処理です。
    既に事件は完了し,あとは,誰が犯人で,どれだけの罪を負わせられるか,軽くできるかだけの話です。
    過去の証拠をただ集めるだけです。

    民事事件も,8,9割方過去の問題です。途中で変更される要因がなきにしもあらずですが,
    いずれにせよ,過去の事件の処理が基本です。

家事事件は違います。
過去を丹念に精査,証拠を精一杯集める作業は,刑事事件や民事事件と同様当然にあります。
しかし,過去の事実が現在や将来の問題に当然に直結するわけではない。
家族関係なので,むしろ過去よりも現在や未来の方がよほど重要な場合がないわけではない。
つまり,刑事事件民事事件のように,「過去の原因故に(法律的な)結果がある」という直線的な因果関係が必ずしも成立しない。

つまり事件は過去の一時点では終わって居らず,今もなお関係が続いているし,
将来も曲がりなりにも関係を続けていかなければならない側面も多い(子どもとか)

    過去はもちろん,現在未来も継続する問題が家事事件ですので,
    今現在の交渉によっても動くことはあるし,
    また未来を見据えるとなると,変数が大きい将来の予測が一般に困難であることもあって,ますます事件の見立てが複雑・困難になる。
    →後注)

    「過去がこうだったよね」と仮に証拠で立証できても,それでは自動的に決まらない。
    (その過去の証拠集めですら,前記のとおり,困難を極めることも多い。)
    また現在進行形ということは,日々その事情の変化を観察しながら対応しなければならない。
    相手方の行動予測を常にしつづけないと成り立たない。

    従って,日々の連絡はもちろん,打ち合わせの回数や時間もたっぷりとらなければならない。
    (家事事件を全力でやればやるほど,事務所経営としては,逼迫していく。)
    →後注2)


【一筋縄では行かない。軌道修正や依頼者とのコンセンサスづくりの必要】
このように,家事事件は,過去の原因のみならず,現在及び未来の各要素が複雑に絡む事件として事案を総合的に見なければ成りたたない。
方針が一筋縄ではいかないのはもちろん,当初の方針も随時軌道修正しなければならない。

ところが,当事者の意識・心情としては,往々にして過去のことが中心となり,将来等に目が向かないこともままある。
(共通認識を得るのに時間と回数を重ねて協議が必要となる。)


【調停委員や裁判官への主張の仕方も難しい】
さらに,事件の見立てが複雑になるということは,
調停委員や裁判官にどのような主張をするのかも,悩みが大きいです。

一筋縄・一直線に行かないと言いましたように,複雑に絡む別異の要因に関し,どのようなバランスやグラデーションで調停委員や裁判官に説明するかは,中々困難です。

調停委員らからは「どっちかはっきりして下さい」と言われるかもしれませんが,
それが簡単に出来るなら苦労はしません。


【法テラスの問題もここに収斂?】
家事事件ほど難しく,そして手間暇がかかるものはないのに
法テラスは,逆にうんと安い。
法テラスの料金では,家事事件では大赤字になり,経営も成り立たない。
その上で依頼者側からの苦情も最も多い。
となると・・・・。

もうちょっと,法テラスも制度工夫した方がよいかもしれません。
特に,子どもの事件はそうかも?
・・・・かといって,私には,よい打開策は見当たりませんが。


    後注)
    なお,刑事事件,民事事件は,本来の司法の役割が大きい事件類型です。

    これに対し,過去の事件であると同時に,現在進行形・未来進行形でもある家事事件は,
    むしろ後見的で行政的な対応(=継続的対応・ケア)を必要とする分野と言われています。

    にもかかわらず,刑事事件や民事事件の処理にすぎないかのような極めて不十分な対応をしているのが法テラスです。
    さすがお役所クォリティー。


    後注2)
    法テラスは,お役所仕事なので,何を言っても始まりませんが,
    普通に弁護士が家事事件を直接受任する場合,
    あくまで例えば,ですが
    調停であれば,期日の第5回までが〇〇円,10回期日までが××円
    というような,報酬基準があってもよいのかなとは思います。

    証拠固めや書面作成,そして2時間にも及ぶ期日出席はいわずもがな,
    期日前の入念な打ち合わせと協議(相手方の出方予測・将来予測を含む)と,
    期日直後の反省会(今後の方針の修正の要否等の検討)を
    毎回毎回しっかりと行わないといけないのですから,

    期日の回数で報酬を区切るのは致し方ないのかなと思います。
    ・・・・継続的対応,後見的・行政的対応が必要なのが家事事件ですので。。。

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