1266 起訴猶予でも嫌疑不十分でもなく,「処分保留だ」なんて・・・・。

いつのころから,こんな処理をされているのか知りませんが,
私は,弁護士になる前は知らなかった
変わった?刑事事件処理の方法があります。

まずは刑事訴訟法の教科書的にはこうです。
身柄勾留付き刑事事件の場合,
勾留期限(延長すれば20日間)が切れると,
起訴か不起訴しかありません。
起訴の場合は,そのまま裁判勾留に切り替わります。

不起訴の場合,いったんは釈放になります。
(別犯罪を犯していれば新しく逮捕勾留はある)

    そして後者の場合,普通に教科書を読む程度だと
    1 嫌疑不十分を理由とする不起訴処分
    2 起訴の猶予相当を理由とする不起訴処分
    があるだけということになろうかと思います。

    1は,いわば検察官からみても無罪と認められる場合(典型例は人違い逮捕勾留「無罪認定」)
    2は,有罪の嫌疑は現にあり起訴は可能だが,微罪等を理由に起訴を差し控えることにする
    というものです。


【不起訴の中には「処分保留」もある】
私は,不起訴にはこの2つしかないと長いこと信じ込んでいました。

しかし,実は,もう一つ,おそらく1の亜種だとは思うのですが
(1を細目分類しなおした結果出てきたもの)
「処分保留」というのがあるのです。

ただ,こういうのは,被疑者への説明にも困りますし,解りにくいです。
弁護士泣かせです。


【処分保留とは】
処分保留と(狭義の・典型的な)嫌疑不十分との違いは
再復活可能性があるかないかです。

処分保留は,言い換えると「証拠未だ不十分」です。
将来証拠が見事揃えば,起訴してもよいとしてしばらく寝かせる事件です。
(寝かせる期間の最長は,時効の期間までとの縛りはあるかもしれません)

これに対し,狭義の嫌疑不十分(人違いの逮捕勾留等が典型)は二度と再起はしません。

ただ,いずれにせよその事件は釈放になります。


【再起なんて卑怯?】
私は,不起訴処分の中身は,前記二分法だと思っていたので,
この第三類型には,正直ショックでした。

刑事訴訟法によれば20日(最大25日)の勾留しかできず,
その中で捜査を完遂しなければならない。
つまりは,その間に起訴出来るに足りる十分な証拠が得られないなら,警察検察はもう二度と再起出ず,事件訴追を諦めるのだと思っていたのです。

    しかも他方不起訴処分のもう一つの大きな柱の「起訴猶予処分」でみると,
    『起訴猶予はやっぱ止めた,結局起訴します!』などと後になって翻意されたのでは,
    被疑者はたまったものではありません。
    有罪の証拠は現にありますので,検察官がやろうと思えば,後々でも起訴できないことはない?のが怖いのです。
    被疑者は再起がありうるとなれば,それをおびえて暮らすことになります。

    ですのでいったん検察官が,起訴猶予処分を裁可した以上は,
    二度とそれを取り消したりしないというのは当然の話です。
    これは,二重処罰禁止の拡張版とも言うべきものかもしれません。

であれば,狭義の嫌疑不十分であれ,「証拠未だ不十分」であれ,
この起訴猶予処分とパラレルに考えるべきことになるではないかと思うわけです。


【しかし悪い奴はいる。ミッシングリンクを見つけたら】
ただ,世の中に本当に悪い奴はいます。

狭義の嫌疑不十分は,検察官によるいわば「無罪的認定」ですが,
世の中の事件はそればかりでなく,
どうしても釈然としない事案・被告人は世の中には結構おりますし,
20日間の身柄拘束による捜査をしただけでは証拠獲得が間に合わないが,
それで諦めたのでは誠にもどかしい場合もあるのかもしれません。

    卑近な例で喩えると,
    手袋を売る場合,片一方しかないときは売ることが出来ない。
    しかし後日もう一方の手袋が見つかれば,その時点以降は先の手袋と一緒にすれば,
    それを売却することもできる。
    これと同様に20日勾留の後でも,もう片方の手袋を見つけた以上,
    何故起訴を躊躇う必要があるか,ということかもしれません。

もとよりその場合でも,もはや再勾留はできませんが,在宅処理であれ,
起訴する余地を残したい事案も中にはあるのかもしれません。
(在宅起訴か,もしくは別件がある場合に別件逮捕勾留に上乗りする)


【やはり被疑者の地位を不安定にする。】
ただ,処分保留のやり方は,
やはり被疑者の地位を不安定にする側面はあると思います。

だから原則としてやめた方が良いと,私は思います。


【グレー処理は】
しかも起訴猶予処分でもそうですが,便宜的に使われるように思えることもあります。
余罪がある被疑者の場合,その余罪は容易に追起訴出来るのにそれをせずに,
悪情状としてウラから忍び込ませるたりする例が結構あります。
横着しないでと言いたいです。

処分保留でも,やむにやまれずでは必ずしもなく,
前段と同様に他に起訴する事案が多くある被告人にあって,
その一つを安易に処分保留にする例がありますが,
そんな話ならもっと全力を尽くして欲しいです。

また仮にこうした多数起訴の場合,問題の被告人は,結局処罰させられますから,一部無罪判決をただ怖がってする「処分保留」もおやめいただきたいです。

カテゴリー:公務員刑事問題

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