1247 国選 初犯者で「追起訴はなくなりました。」は,実は困ることもある。

国選弁護人をやっていると,
被疑者被告人には,弁護人が受任した事件(例えばA)に加え,
余罪(例えばA2,A3,B,C)を犯していることがあります。

その場合,民事事件とは違い,同時処理が原則になっている。
後から後から別の刑事裁判を別途やるわけにはいかない。

例えば,間違っても,A事件は甲裁判官,A2は乙裁判官,A2は丙裁判官,Bは丁裁判官,Cは戊裁判官などといった,随時バラバラの処理にはならない。

結局のところ,A事件の裁判の機会に全部処理した形にすることになる。


【同時処理の2通り】
同時解決のやり方は大きく分けて2通りある。

1つには,最初のA事件の公判終了までに,他の事件を起訴した上で併合して一括処理する。

もう1つは,併合処理はしないまでも,余罪事件は,A裁判終了までに不起訴処分扱いにして,「同時解決」したことにする。

なお,2つの中間もあり,余罪の一部は追起訴するが,その余の余罪は不起訴処分にしてしまうこともある。
実際はこの例が多いかもしれない。めぼしい余罪のみ追起訴にするわけだ。

なお,余罪につき追起訴がある場合に,(再び重ねて)逮捕勾留するかどうかは,元の事件Aで,被疑者被告人が身柄釈放されているかどうかによると思っておけば,概ね間違いないと思われる(極悪重大犯罪が含まれる場合は例外・微罪も含め,再逮捕を繰り返す)。

    つまり元のA事件で身柄拘束されていたら,多くの場合,余罪は裁判勾留というシステムを利用して,捜査がなされる。
    もしA事件で身柄勾留されていなかったり,検察官にも余罪が知れずに保釈がなされていて,余罪が見つかった場合等は,余罪で逮捕しようということになることもある(保釈していたら保釈金が無駄になるかも)。


【追起訴がある時とない時との身柄拘束の長さは】
最初の例で,追起訴が1つでもされる場合と,まったくされない場合とで身柄拘束の長さに違いがあるか。

これも一概にはいえないが,
追起訴がある方が,裁判勾留というたっぷりとある勾留期間を前提にしても,全体の勾留期間は長くなると思った方がよい。
第1回の期日までに,追起訴が間に合わないことが多く,期日が延期されるためだ。
追起訴がない場合には,第1回公判期日で審理を終えることが多いので,早く判決がおりるのだ。

    実は,裁判の第1回公判期日は,最初のA事件の起訴日から約1か月後だが,
    1か月というと,再逮捕再勾留の22日間よりも長い訳だ。
    追起訴により期日が延長されると,さらに身柄拘束が長くなるわけですので。

    だったら,再逮捕再勾留してもらった方がよいのではないかとも言えなくない。
    余罪を持つ大多数の被疑者被告人は,余罪は複数あっても追起訴は1件のみとする例が多いから,1件追起訴するだけで,例えば最初の起訴から2か月くらいはかかってしまう。判決はその更に後になるわけ。

    まあ,追起訴1件というのは,余罪全件を捜査した結果論にすぎないから,そこまで言うと警察には気の毒になるかもしれませんが。


【追起訴あるなしで求刑や量刑の差は?】
実は,追起訴の有無で,求刑や量刑にほとんど変わりが無いというのが,長いこと弁護士等をやってきた者の実感です。

追起訴がなくても,検察官としては,「余罪が完全無罪」とはならず,怪しさが少しでも残れば,最初の事件Aの公判に忍び込ませることができるのが実態です。

    もちろん,よほど国選弁護人が頑張って,起訴されていないことを理由に
    余罪に関することを徹底排除できればよいですが,
    「A事件自体の悪性的情状やA事件に密接関連する経緯事情」とされることができてしまうはずです。
    なかなか徹底分離戦術は成功しないと思います。

結局,検察官の求刑や裁判所の量刑は変わらないと思った方が正解です。


【初犯の,しかも実刑にもって行かれるときが困る】
以上の運用でも,特に文句が出ないのは,
日本人が素直であることのほか,
量刑は同じでも,審理期間,つまり身柄拘束期間が短縮されれば,それはそれで善いことだと思う向きがあるからだと思います。

しかし,仮にそうだとしても,どうしても困ることがあります。
それは,追起訴されないと,余罪について被告人の防御がきちんとできないことです。
追起訴になった場合,不起訴記録は弁護人は閲覧出来ません。

それでも余罪自身が本体事件に勝るとも劣らない内実を持っている場合であれば,まあ構わないかもしれません。
その被告人は,社会悪も甚だしいのかもしれませんから。

ただ,どうみても,余罪はつまらないほんの些細なことで,
普通無視して当然,落ちるべくして落ちた事案だと思われるものでも,
検察官はやろうと思えば,本体のA事件に,もぐり込ませることもできるわけです。

それが最も切実に現れる例が初犯の例です。

    初犯は,殺人・強盗傷害クラスでないと,実刑にはなりません。
    また比較的重いと言われる事件でも,未遂であれば,初犯は普通実刑になりません。

    しかしにもかかわらず,時に何故か実刑に持っていきたい検察官がいるわけです。
    そうした場合には,起訴されてもいない余罪やその可能性の類まで,Aの公判に潜り込まされたりするわけなのです。
    中でも検察官が求刑で堂々と「実刑を求める」なんて言われると,裁判所も配慮して,余罪も含めた被告人のあら探しを始めることにもなるのです。

    もとより,過去何度も刑務所を出たり入ったりを繰り返している人であれば,
    まあ,どんな軽い余罪やその可能性まで含めて,「潜入的悪用」をされても仕方ないかもしれません。

    しかし,初犯者については,多少の周辺問題があったにせよ,その周辺問題を活用する場合には,専門家としての注意が必要かと思います。
    執行猶予であれば,多少の周辺問題は,余罪の可能性程度であっても,まあよいと思います。
    可能性の程度でも「二度とそういう世界には近づくな」と弁護人が注意しても良いからです。

    でも,初犯者として,通常滅多になされない実刑を求刑されるなら,
    むしろ正々堂々と余罪も含めた正式起訴をしていただかなければ,被告人はきちんとした防御ができなくなります。
    →後注)


      後注)
      私は,裁判所時代も含めて,死刑事件の担当はしたことがありません。
      ただ死刑が予想される事案では,裁判所は,最後だからとして,比較的寛大に弁護活動を許す向きもあると聞いています。
      言いたいことは全部言わせるのです。

      初犯で,その罪自体も未遂であったりして,実刑になることが決して一般的ではない事案においてなお,実刑をあくまで求めていくというのであれば,
      それなりの慎重な手続や捜査対応,余罪も含めた正式起訴がなければならないと思います。

      防御できないじゃないですか。

カテゴリー:刑事問題司法改革弁護士

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