1167 婚姻費用と養育費とでは緊急性や紛争予防性が違う。

裁判所は,何年か前に,婚姻費用も養育費も,各算定基準と算定表(早見表)を整備しました。
いずれも同時期,一緒にです。

ここで確かに,婚姻費用と養育費は,そもそも額が違うとはいえ,
婚姻費用は養育費をも含むことは実際多いです。
逆に離婚すると,純然たる養育費オンリーになります。
そういったある種共通の構造はあります。

だから,それぞれの算定基準や算定表(早見表)は,
同じファイル内に前半と後半,あるいは第1章と第2章
という具合に区別される程度で,大抵一緒に紹介されています。


【しかし婚姻費用と養育費とは緊急性がまるで違う】
婚姻費用と養育費の根本的違いは,
緊急性等の有無や,紛争予防の必要の高さがまるで違うということです。

養育費の場合は,既に,調停や調停外による離婚の合意が成立しています。
例外はありますが,それなりに問題点を解決清算するのが離婚合意ですので,
離婚後の問題は,自ずと絞られてきます。

しかも離婚後の生活の見通しや覚悟が決まらないと離婚合意には至りません。
よって,養育費は,重要ではあるにせよ,緊急性というと,そこまでのものはないことになります。

    養育費について審判前の仮処分(仮払いの申立て)というものが想定できるか。
    理論上はもちろん認められますが,ただ保全の必要性(緊急的保護の必要性)が,実際には厳しく審査されるだろうということです。

    養育費支払いの重要性が低いという意味ではなく,比較的緊急性が乏しい例もあるという意味です。

    現に,養育費の強制執行(本執行)の例を見ていても,数年間もの長きにわたり強制執行申立てを放置している例が見受けられます。
    本当に本当に喫緊の課題であれば,養育費の審判が下りて,不履行があれば直ぐにでも強制執行でも良いわけです。
    過去貯まりに貯まった養育費を強制執行で取り立てる方も時に見受けられます。

これに対し,婚姻費用は違います。
突然夫が出て行ったとすると,家計や子ども達の生活と突然大混乱に陥ります。

そうした生活の急激な変化を緩和すべく婚姻費用を申し立てるのですが,
そうした緊急性が一応認められる中で,不貞をして払いたくない夫が
調停という手続を利用して,ぐだぐだ合理的に理由のない理由を持ち出したりして引き延ばしをはかる。
かえって,離婚したいので家を出たのですから,嫌がらせを調停でも調停外でも積極的に仕掛けてくる。

こうした婚姻費用においては,夫婦間の調停とはむしろ切り離す必要だってあります。不貞の夫によって,直ぐにでも必要な婚姻費用がごちゃごちゃにされないために,です。
兵糧攻めをされることで離婚等の取引の材料にされないようにする必要があるのです。

このように,婚姻費用は,夫婦間の諸問題とは区別して真っ先に迅速な決着をしておく必要がある場合もままあるのです。

    しかも婚姻費用は,現在の婚姻や家族生活の平和の維持と保全という目的や機能があります。
    離婚後の養育費は,既に離婚している夫婦ですので,子どもの保護はもちろん重要ですが,(元の)夫婦家庭の維持という要請は,その限度で遠のいています。


【要は調停軽視は拙いということ】
だから,私は婚姻費用は仮払いを含めて迅速に,
養育費はより厳格な手続重視でよいと,一応の区別をしています。
・・・・もちろんそれぞれに例外はありますので,事案に即した注意が必要です。

ここで何よりも大事なことは,調停の機能を重視することです。
調停を,混ぜっ返しの場にしたり,
調停の趣旨目的を軽視して蔑ろにする目的で抜け駆けをすることは許されません。

婚姻費用について,調停に先がけて仮払いを求めるのは,調停という大事な話し合いを婚姻費用という日々の生活費の問題で混乱させられたくないからです。
ここでの仮払いは,むしろ後に控えた夫婦家庭のための調停を充実させるためにする手立てです。
逆に,夫婦のデリケートな問題を話しあう場に,婚姻費用を払う払わないを持ち出す方が調停の本筋を混乱させてしまうことがあるのです。


【夫からの子の面会交流と,婚姻費用や養育費の優先関係】
婚姻費用は,夫が不貞で突然出て行った場合は,日々の生活費として特に重要です。
ところが,あろうことか勝手に出て行った夫が,なんと子どもの面会を求めることがあります。

この場合,本来「じゃあ帰っておいで」というだけになるはずです。未だ離婚前です。
面会交流の調停審判を真っ先にする必要はなく,後回しでも全然よいわけです。
最悪婚姻費用と同時裁判であり,むしろ婚姻費用こそを真っ先に審理すべきです。

    この場合,婚姻費用より面会交流を先にする調停運用をするとしたらそれは完全に間違いです。
    調停に過度の負担や混乱を与えるものです。
    面会交流を求めた夫には,家庭破壊や調停軽視の発想があるということです。

ところが,養育費と面会交流との関係はどうでしょう。
両方を同時並行して審理することが適当な場合も,婚姻費用の時よりはあるでしょう。
必ず養育費の審理が先だ,にはならないと思います。

面会交流が先でよいかと問われると,そこまでのものではないとは思いますが,
婚姻費用との優先関係のようには厳しいものではないと思います。
→後注)


    後注)
    婚姻費用は,夫の不貞による別居に適時的に対応して,今の家庭を維持することこそが本質になることがままあります。

    これに対して,養育費は,既に離婚した元夫婦の問題です。

    きちんと離婚合意をして,元夫が,今新しい家庭を築いている場合について,
    もとより元妻が養育費を正式な手続に則って求めるのはいっこうに構わないですが,
    ただ「元夫だから,離婚させられたのだから,彼や彼の新しい家庭にはそもそも何をしても良いのだ」ということは,法律上はやはり間違いということになります。
    気持ちは理解できなくもないですが,元妻だからといって,調停手続軽視の態度は拙いです。

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