1011 バイデン発言以上に,佐藤幸治憲法教授「ポツダム宣言はハーグ陸戦条約に優先適用,だから(押し付け)憲法は問題はない」は,絶句もの

佐藤幸治憲法学者による,
青林書院発行の「憲法」(第三版)77頁は,驚きですね。

曰く,
ハーグ陸戦条約の規定にいう「占領」とは,
GHQによる日本占領に適用にならないと解されるし,
仮にそうでないとしてもポツダム宣言の方が陸戦条約に優先適用される,
と。

    こうした解釈は,実に残念で悲しいことです。
    先生を尊敬して,同書を20回以上通読したかつての司法試験受験生からは。


【ハーグ陸戦条約の規定及び趣旨】
ハーグ陸戦条約とは,この条約を批准したか否かにかかわらず,
文明国家であれば当然に遵すへきであるとされている重要な戦時慣習法です。

同法第43条 
国の権力が事実上占領者の手に移りたる上は,占領者は,絶対的の支障なき限り,占領地の現行法律を尊重して,なるべく公共の秩序及び生活を回復確保するため,施し得べき一切の手段を尽すべし。

この規定は,占領軍が占領地域の法律を尊重することを定めています。
占領者が被占領者に対して,法律はもちろん,まして国の最高法規である憲法の改正に介入あるいは命令することは禁止されているのです。

    だから,バイデン発言はとんでもないわけです。
    米国が野蛮な非文明国家であることを認めたことになるわけですので。


【ポツダム宣言】
佐藤幸治が,ポツダム宣言が優先すると言いますので,見てみましょう。

ポツム宣言

    1 合衆国大統領,中華民国政府主席およびイギリス総理大臣は,自国の数億人の国民を代表して協議した上で日本国に対し,今回の戦争を終結させる機会を与えるということで意見が一致した。

    2 合衆国,英帝国および中華民国の巨大な陸,海,空軍は西方から自国の陸軍および空軍による数倍の増強を受け日本国に対して最終的な打撃を加える態勢を整えた。右軍事力は日本国が抵抗を終止するまで同国に対して戦争を遂行する一切の連合国の決意によって支持され,かつ,鼓舞されているものである。

    3 覚悟を決めた世界の自由な人民に対抗するドイツ国の無益かつ無意義な抵抗の結果は,日本国国民に対する先例を極めて明白に示している。現在,日本国に対して結集しつつある力は,抵抗するナチスに対し適用された場合において全ドイツ国人民の土地,産業および,生活様式を必然的に荒廃に帰せしめたのに比べ,計り知れないほどにさらに強大なものになるぞ。我らの決意に支持される我らの軍事力の最高度の使用は,日本国群体の不可避かつ完全な壊滅を意味すべく,また,同様必然的に日本国本土の完全な破滅を意味する。

    4 無分別な打算によって日本帝国を滅亡の淵に陥れたわがままな軍国主義的な助言者によって日本国が引き続き統制されるべきか,あるいは理性の道を日本国が進むべきかを日本国が決定すべき時期が到来した。

    5 我らの条件を左に述べる
    我らは右の条件を絶対に離脱しない。これに変わる条件は存在せず,我らは遅延を認めない。

    6 我らは無責任な軍国主義が世界より駆逐されるまでは平和,安全,および,正義の新秩序が生じ得ないことを主張する。従って,日本国国民を欺瞞して世界征服の暴挙に出る過ちを犯させた者の権力と勢力は永久に除去する。

    7 右のような新秩序が建設され,かつ,日本国の戦争遂行能力が破壊されたことの確証が得られるまでは連合国の指定する日本国領内の諸地域は我らの指示する基本的な目的の達成を確保するために占領されるべきだ。

    8 カイロ宣言の条項は履行されるべきで,また,日本国の主権は本州,北海道,九州および四国と我らの決定した島嶼に限定されるべきだ。

    9 日本国の軍隊は完全に武装を解除された後,各自の仮定に復帰し平和的かつ生産的な生活を営む機会をえさせるべきだ。

    10 我らは日本人を民族として奴隷化しようとしたり,または,国民として滅亡させようとする意図を有するわけではないが,我らの捕虜を虐待した者を含む一切の戦争犯罪人に対しては厳重な処罰を加える。日本国政府は日本国国民の間における民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障害を除去すべきだ。言論,宗教,思想の自由,ならびに基本的人権の尊重は確立されなければならない。

    11 日本国はその経済を維持し,かつ公正な損害賠償の取り立てを可能にするように産業を維持することを許される。ただし,日本国に戦争のための再軍備をさせるような産業はこの限りではない。右の目的のための原料の入手,(原料の支配は含まない)を許可される。日本国は将来世界の貿易関係への参加を許される。

    12 前期の諸目的が達成され,かつ,日本国国民の自由に表明された意思に従って平和的な傾向を有し,かつ,責任ある政府が樹立された場合には,連合国の占領軍はただちに日本国より撤収する。

    13 我らは日本国政府がただちに日本国軍隊の無条件降伏を宣言し,かつ,右行動における同政府の誠意によって適正かつ十分な保障を提供することを同国政府に対し要求する。右以外の日本国の選択は,迅速かつ完全なる壊滅があるだけだ。

いくら読んでも,私には,
占領期間中の暫定措置としてはともかく,
憲法を押し付けることまでは,ポツダム宣言には書いていないとしか思われない。
例えば12,13項等
→後注)


【憲法違反の規則や条例が許されないような話】
佐藤幸治先生は,憲法の先生であり,
例えば憲法違反の規則や条例等は無効だと仰るのです。

だったら,ハーグ陸戦条約という重要な国際法である戦時慣習法につき,
仮に抵触するポツダム宣言等の受諾という条約が後に成立したにせよ,
ポツダム宣言の方がハーグ条約に優先するとかは言うべきではないでしょう。

悲しいかな,どの国であれ,ならず者国の侵略を受けると
およそ憲法なるものは,即刻破棄されてしまうし,
新しい憲法を押し付けられてしまえば,実際上如何ともし難いものがある。
こうして新しい憲法が事実上の支配力を持つことになるのだ。
支那の侵略が起こってもそうだ。

だからこそ,こうした陸戦条約があるのではないのか!
文明国は,やっていいことといけないことがあるんだよと。

佐藤幸治教授のように,何のかんの理屈をこね回されたら,
およそハーグ陸戦条約が適用になる場面なんてなくなってしまう。

    なお,民法の議論ですら,いったん約束さえすれば,
    約束した時の事情を何らかえりみることすらなく,以後未来永劫権利を放棄しつづけるなどという馬鹿げた議論は存在しない。
    況んやハーグ条約に抵触する内容の条約をや,だ。

日本に限らず,また理由の如何を問わず,
他国に押しつけられて事実上通用してきた憲法であっても,
ハーグ陸戦条約違反であるとしておけば,
占領が解け,時も経過して事情も変化したあかつきには,
その国の本来の姿を取り戻すことが可能になるということではないのか。
占領解放後何年かかっても,だ。

「押し付けられた現行憲法にも良いところかある」などと言いだしたら,それこそきりがない。
これまで他国に押し付けられたどの憲法にだって,そのような側面は必ずあるだろう。

国の存立に関わる学問を探求する憲法学者でありながら,
このようなことを言われる佐藤幸治先生がまるで理解できない。
→後注2)


    後注)
    日本は,戦争中から,早期降伏を求める前提として,天皇制存続が条件でした。
    そもそも当時天皇制は2600年も続いていたのですからこれを護るのは当時として当然です。
    米国も,天皇制を利用して,統治を円滑にし終えたのです。
    そのお陰で,誰も占領軍に抵抗しなかったのです。

    そうした中,占領憲法を押し付ける際,
    これを呑まないなら,天皇の存続を保障できない
    としました。
    しかも三度目の原爆投下もちらつかせたとのことです。

    これが押し付け憲法でなくて,一体なんでしょうか。


    後注2)
    佐藤幸治教授は人権の項目では,
    憲法13条の解釈について深くご研究され,
    人格的自律権,自己決定権の解釈論を得意分野とされている。

    自己決定権とは,他からの干渉を排して自ら決定することだ。
    従って,例えば良いものだからといって,他人に押し付けることは許されない。
    同人の自己決定を妨げることになるからだ。

    そうした研究結果やお立場にありながら,
    なおかつハーグ陸戦条約という,重要な根本法があるにもかかわらず,
    いわば自国の人格的自律権につき,なぜここまでご都合主義の解釈を建てられるか,
    甚だ疑問である。

    端的に言って,バイアスがかかっているとしかいいようがないと思われる。

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