922 自由すぎる外国人依頼者と訴えの取下げ方法~特別委任事項

民訴法55条1項では,弁護士代理における訴訟代理権の範囲が定められています。

ただ,2項では,特別委任事項が規定され,
一定の重要な事柄については,改めて依頼者から委任状を取り付ける必要があります。

    訴訟の取下げや訴訟上の和解によって,特に事件を終わらせたい場合などがそれです。



ただ,実は,一般に弁護士の委任状の書式には,
訴訟の取下げや和解等の権限も最初から印字されております。
そのため,信頼関係がある依頼者の場合に,改めて委任状を取ったりすることは,弁護士は特にしていないかもしれません。
もちろん,本人へのその旨の意思確認自体はかなり入念に行いますが。。。

    ただ,こうした簡便なやり方は,あくまでも信頼関係が残っている場合です。
    しかも依頼者は日本人です。もちろん日本語でいくらでも会話できます。

    外国人の場合は,どのような変容をうけるでしょうか。


【自由すぎる外国人】
どんなに真面目に見えても,外国人は,所詮外国人なのかな
日本人のような考え方を共有しないのかな,と思えて仕舞う例が,かつてですが,ありました。

かなり仲良くなった外国人のために,訴訟を提起したのですが,
終盤になって,突然藪から棒に,止めたいと言ってきたことがあった。
あとほんの少しのことで判決になるのに。

ところが,その外国人は,それを精一杯説明しても,きかない。
そうこうするうち,ただでさえ会話がままならないのに,連絡さえも取りにくくなっていった。

    外国人が困るのは,やはり日本人にはない自由な発想があること。
    良い面でもあろうが。
    この例では,自分が止めたいと言えば訴訟は自由に止められると信じて疑わない。

訴訟提起を受けた被告は,その外国人のいい加減な対応に,当然大層お怒りであり,そのため私は本当に困ってしまった。
もちろん,裁判所にも困った顔をされた。

しかも,「訴訟を止める」は,法的には多義的で解釈の幅も広い。
どんなに最低でも,その意味するところやその射程距離を法的に的確に捉えないと,
弁護士は後々の責任問題になりかねない。

信頼関係を失いつつある,それも自由な外国人とどう折り合うか。


【特別委任事項であることをひたすら貫く】
こうした混線した外国人に関し通訳人には思いがけず言われたのは,
「弁護士限りでも,訴訟取下げはできるのでは?」と。
おそらく通訳人は,一般に弁護士がしているやり方を私が知らないのかと思って親切に教えてくれたのでしょう。

しかし,そうではありません。
こんな事例で,特別委任事項を軽々しく扱うことは絶対にできません。

    最初に書いて戴いた委任状に,訴訟取り下げの権限が一応表記されていても,
    依頼者が当時何処までそれを具体的に認識していたかは,特に外国人の場合は疑問です。
    最初の委任状は,事件の依頼を受ける時ですから,なかなかそこまで突っ込んだ話をしていないこともあるかもしれません。

    少なくとも,最初の委任状でもって,訴えの取下げを弁護士ができる場合とは,
    未だ信頼関係が十分にある場合で,対話もよくできる場合に限ると思います。

    自由すぎて聞き分けもなく,それで信頼関係がなくなりつつある中,
    元々言葉が通じないのに,最初の委任状で訴えの取下げができるとは思えません。

    後に問題が生じても,通訳人は証人になってくれません。

こうした自由すぎる,
被告の立場からすると,身勝手に過ぎる迷惑千万の外国人の場合は,
民訴法の特別委任の規定の趣旨をとことん貫く必要があります。

当該訴訟を特に取り下げる旨の特別の委任状,
少なくとも母国語の訳文と通訳人の署名入りの取下書に自筆のサインがない限り,
取下げ手続には一切応じないことです。


【民訴55条2項は黄金の規定】
私が上手くいかなくなった外国人にほとほと頭を悩ませている時,
民訴55条2項は,まさに黄金の規定だと思いました。

代理人弁護士が,訴えの取下げをするには,本来依頼者から改めて特別の委任状を必要とする。
そんな規定の真骨頂をその当時,本当に思い知らされた瞬間でした。

カテゴリー:弁護士民事裁判

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