798 子どもの事件はタイムチャージ制導入もあり?境界確定訴訟のように。

前回の続きです(→797)
弁護士事務所として,子どもの事件はどうしたものか。

真面目にやればやるほど赤字になってしまう。
しかも本当に疲れ切ってしまう。

年間2000通もメールをやりとりする案件はほかにありません。
(土日構わず,メールFaxが飛んでくるのも,他の仕事とは違う点です。
土日も拒否はしませんが,ただ他の仕事では,土日こちらに連絡することに配慮や躊躇があります。)

つい数年前ですが,極めて良心的で,紳士かつ真摯な弁護士の大先輩から,
境界確定訴訟について,これを受任する時は,タイムチャージ制で受けなさいと。

このアドバイスは,実に目からウロコでした。

    確かに,境界確定訴訟は,隣人同士で争われているため,
    当人たちしか分からない苦しみと紛争の継続性があり,
    これを日々弁護士に伝えていくことになる。

    ところが実際争われるラインが10メートルも20メートルも違うことはない。
    それより2ケタ違う,10センチ,20センチの幅の中で争い合っている。

    おまけに,最後は,言い方は悪いが,
    裁判所がラインを勝手に引くという,なんとも後味の悪いこと。

    要するに,弁護士は日々の紛争を常に対応する羽目になる上,証拠集めも大変,
    にもかかわらず,最後は裁判所が勝手に線を引く。
    何よりも争われる境界の幅は20㎝幅以内だから,
    仮に裁判で勝っても,せいぜい20㎝勝っただけとなり,報酬は貰いにくい。
    (しかも依頼者は勝って当然と思っている。しかも金銭的利益を追加したのではない。)

    これでは,労力多くして利益少ない依頼案件になってしまう。

ベテランで紳士の弁護士大先生は,こともなげに,あっさり
「それはね,タイムチャージ制でないと受けないとしたら良いんだよ」と。

対応した時間に応じて,いくらいくら払って貰うべきだと。
月々における仕事の大変さに応じて月5万,10万円,15万円と貰うわけ。


実は,弁護士の料金徴収は一般には,多くて2つしかありません。
①仕事始めの着手金
②全部終わった後の成功報酬(ただし勝った場合のみ)

ただこれだと,紛争が長引けば長引くほど実はペイしない危険があるのです。
それでも,前回述べたように,
いったん山場さえ越えれば,次第にやることが減っていく一般の案件は良いのです。
山場を越えるまでは大変でも,越えた後は別の事件による収入で回していけば良い。

ところが,境界紛争は,山場もあるが,
常時現在進行形の紛争状態に巻き込まれたまま。
その上成功報酬も貰いづらい。
だから,弁護士の上記報酬の徴求方式ではとりわけ厳しい。

なので,タイムチャージ制にするべきだとなるのでしょう。


両親間で熾烈に争われる子どもの事件は,
日常的随時的紛争が継続する点で境界紛争と酷似しており,
また別の意味で成功報酬を取りづらい案件ですので
(しかも最後はやはり裁判所や調査官の都合で決まってしまう)
理論的にはタイムチャージ制が正しいかなと思います。

かえって,子どもの事件の厳しさは,境界紛争以上かもしれません。
境界紛争は,境界紛争がもちろん主で,
あとは警察を呼んだり呼ばれたり的なことが付け加わるくらいだと思います。

ところが子どもの案件は,
夫婦間の他の権利利益上の問題を次々に誘発していくのです。
境界確定は紛争性の拡大はそこまではありませんが,子どもの事件はエスカレート型。
「そっちがその気なら,こっちは逆にこれをお見舞いしてやる」
という,やられたらやり返すシーソーゲームになりやすいのです。

実はこの場合,紛争処理計画やリソースの分配に,誤算が生じやすくなります。
100の労力で終わると思ったら,エスカレートして300になった。実は500も働いたとか。

誤算したとの意味は,
100に対応するお金しか戴けていないのに,500も働かされたということです。(注)

    私は,子どもの事件につきタイムチャージはやったことはありませんが,
    次に来られた方から始めてみようかとあれこれ思案しているところです。

    少なくとも子どもの教育費に月ん十万もかけながら,
    こちらの報酬は,法テラス料金の二束三文では納得いかないとの思いもあります。

    子どもの教育費もこちらの弁護士活動もどちらも子どもの福祉のためです。

    しかも常時対応させられるのです。
    何百通何千通のメールやりとりの上でも文句が来る程なのです。

少なくとも理論上は,タイムチャージ制が正しいと思います。(注2)



ところで,最近,産婦人科のなり手がいないと言います。
なんか分かる気がします。

妊婦の容態が急変しやすいという意味で,対応に苦労のいる大変な仕事であるのに,
医療過誤訴訟が次々に飛んでくるためです。

元々子どものことになると,情け容赦しないのです。
しかも1人や2人しか産まない現代では,とりわけ医師ばかりに非難が行くのです。


    注)苦労しているにもかかわらず,弁護士が信頼を失いやすい危険もあります。

    弁護士としては,
    「そこまでは相手(片親)にしないで下さい。私に言われてもそんなことはできませんよ」
    と言いますと
    「なんて弱腰の弁護士なのか!」
    「でもそれをやったら,あなたが仕返しされて,困るだけでしょう。」
    「なんで私の言うとおりしてくれないの!」
    「だって,子どもの福祉だろう,親の福祉じゃないよ」
    ・・・・依頼者との間で争いにもなりやすいのです。

    この点の解決法は難しいのですが,
    ただ,要求すればするほどお金がかかるという,
    学習塾でも採用しているようなやり方をとることくらいしか方法がないかもしれないということです。

    (注2)
    「子どもは生きているんだから,常に対応してくれないと困るわよ」
    という方もおそらくおられるでしょう。

    常時対応の必要性を否定するのではないのです。
    むしろ毎日生きている子どものことだから,それに対応していくのだから
    毎月経費を戴かなければいけないという理屈なんです。

                    -byフローラ法律・岡崎 from 2013.3.24-

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