746 セカンドオピニオンと債権(契約)侵害

以前述べましたが,若い弁護士先生の相談で,
「他の弁護士にセカンドオピニオンを求めたいから,
記録一式全部直ちに寄越せ,今取りに行くから」
「原本も早速全部返してほしい」
と突然言われることがあったようです。

彼の名誉のためにいいますが,その先生は熱心に仕事されるし,
作成した裁判書類は,毎回依頼者にFax等して送るので,
おかしなことをしたのではないと思います。後注1)

少なくとも,今回もその前提で.述べたいと思います。
前提が違えば,使う理論も違ってきますので。

    なお,以前に述べたとおり,
    セカンドオピニオンの権利と記録一式の再交付請求権とは結びつきません。
    (全く交付したことがなければ,一度めの請求権は勿論あるでしょう。)

    しかもセカンドオピニオンと原本返還は直接結びつきません



この事例でいえば,今現在も受任契約が継続しているのです。

そもそも事件の依頼に関して預かる文書は,
大抵は過去の事実に関する証明に役立てるもので,
現在進行形の権利利益に関するものではないことが殆どと言ってよい話です。

そして裁判等の委任契約がある以上は,未だ原本を使います。
よって,本件契約以外に関する依頼者の権利利益を実現を妨げない限り,
直ちに返却しなければならないものではありません。

仕事をするために預かっているのですから,法的解釈論としては,現在又は近い将来における現実的な権利利益実現のために必要であるなど特段の事情がない限り,返還,特に即時返還の義務はないはずです。(後注2)



最初の例で,一生懸命頑張っている先生であるのに,
何故突然こう言ってくるかというと,
セカンドオピニオン以上に,弁護士乗り換えの準備をしているのだと思います。

    セカンドオピニオンのために,
    記録の一式の二度目の交付請求や原本返還が必要なのではないのです。

    新しい弁護士にスムーズに乗り換えるために,それが必要なだけなのです。

    乗り換える際,依頼者の事情で契約解除をなせば,依頼者が賠償責任を負います。
    おそらくこのことを心配しているのだと思います。

    要は,全部を回収してからであれば,元の委任契約を解除しても,
    解除された弁護士は賠償責任を問うのが実際上困難になると踏んでいるのです。

【債権侵害の回避】
方や,乗り換え先の弁護士としても,メリットがあります。

返還後,解除がされた以後の段階で受任したことにするのです。
この場合,他人の契約を侵害したとして訴えることも事実上できなくなるのです。
だからそう指導しているのだと思います。

    加えて,記録一式があると,仕事はし易いです。難なくスタートダッシュできる。
    前の弁護士が,各方面の調査(出張調査を含む)していたりするし,
    その事件の問題点をある程度クリアした上で提訴していますから,面倒なことが少なくなっているのです。

    下準備が最も大変なのにこれがないのですから。
    (形がないところを形にすることとか,
    悩み相談的な時間や基本的法的知識や事例紹介も含め,
    多くの時と労力を費やしている。
    最初のうちは基礎固め作業の割合が大きく,手間暇ばかりかかる。)

    費用の点ても,お徳です。
    裁判所への謄写請求をすると,2,3万かかることがありますから。
    1枚45円換算ですから,300枚の裁判記録の謄写ですと,2万7000円かかります。

    裁判所への記録取り寄せの手間暇も回避できます。
    複写の作業自体は弁護士会の職員がするのですが,
    裁判所の記録の現物を見に行くとなると手間暇が掛かるのです。

債権侵害の問題さえクリアできれば,濡れ手に粟のいいことだらけです。


なお,以上は,元の弁護士先生が一生懸命やっている場合として読んで下さい。
上記理論自体は正しくても,問題ある弁護士の例でこれを言うのは拙いでしょう。

    後注1)若い弁護士先生の言い分によれば,ですが,
     ①報酬取り決めは低廉・最低レベルのもの(値引き済み)だし,
     ②処理に遅れ等は全くない
     ③作成書面はFaxしているほか,
     ④事あることに経過報告や確認等や打ち合わせ準備してきた。
     少しでも意に反すると怒られるので勝手ができる筋合いではない。
     ⑤裁判でも一定の前進を見せており,処理にも問題はない。
     ⑥その他,勿論預かり金等の金銭問題は全くない

    後注2)法テラス支援の場合には,法テラスが規定を設けています。
    ~受任者は,代理援助の個別契約が終了したときは,速やかに代理援助に係る事件が係属している裁判所に辞任届を提出し,かつ,被援助者に証拠資料を返還しなければならない。ただし,証拠資料の返還については,被援助者の住所が不明の場合は,この限りでない。

    この規定の文言に従うと,本件に即せば,
    弁護士が解任されれば記録を返す必要があるが,解任されない間は記録を返す必要がないことになります。

                    -byフローラ法律・岡崎 from 2013.3.24-

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