736 殺人罪の法定刑(5年~)は軽い?-重罰法改正のとき最高裁は?

フランスの民間人へのテロは,戦慄・すさまじいものでした。
心からお悔やみ申し上げます。

    フランスのテロも,早い話,例の秋葉原無差別殺傷事件のようなもの。
    要するに人殺しや傷害等の罪を犯した犯人である。
    そして人を殺せば殺人罪により処罰されます。
    ・・・・おそらくかの宅間被告人のように。。



ところで,私ら弁護士は,被告人の刑を軽くすることが仕事だから,
犯罪の法定刑は軽い方が有り難いのは,ある意味では確か。

    特に,法定刑の下限が懲役7年以上か,6年以下かでは
    初犯で執行猶予が付くか付かないか変わってくる。
    (情状酌量による刑の減軽がなされた場合に限るが。)
    弁護士の仕事としては,6年以下の方が有り難い。

    例えば,かつて強盗致傷事件では,法定刑の下限が懲役7年だったので
    初犯でかつ窃盗崩れのかすり傷1つの事例1件犯した場合でも,
    刑務所に直行だった。
    (実は,裁判所時代,合議体の判断でしたが,
    情状酌量の上でも3年6か月の懲役・実刑に処したことがあります。
    私としては,痛恨でした。)

    それが,法改正で下限が6年になったので,
    初犯で,窃盗崩れのかすり傷1件のみの強盗致傷事案では,
    刑務所に直行は回避できるようになりました。
    (どんなに軽微な場合でも初犯から実刑だった問題が回避されたという意味。)



他方,殺人罪は,下限の法定刑が懲役3年から5年に変更になりました。
初犯では情状酌量により執行猶予が可能であるという点では変わりません。

ただ,法律の勉強をしていた時からの疑問で,
なぜ,強盗致傷の方が,かすり傷でも最低懲役7年で(当時)
殺人罪の方がむしろ,下限は懲役3年(当時)なのだろう,
と大変に疑問でした。

前記の法改正により,差は縮まったものの,なお殺人罪の方が軽い。
この法改正も理解できない。

この法改正に前後して,裁判員裁判が始まったが,
裁判員になられた普通の良識ある日本人は,
私の意見(処罰の均衡が取れていない)に同調してくれるのではないか。

この規定の仕方によれば
下限懲役5年になった法改正後でも,故意で人を殺しその命を奪っても
場合によっては執行猶予が付くことになる。
そんなの必要あるの?って,思う。

    実務家の間で,執行猶予にしたがるものに
    母親が自分の産んだ赤子を殺した場合があった。
    こうした場合,大抵精神的に追い詰められている時にすることだからだ。
    情状酌量による刑の減軽を使うことによって。執行猶予をつけるわけだ。

    でも、赤子や幼い子でも故意に人の命を奪ったのに,
    過失による場合ではないのに,
    執行猶予の用意等は果たして必要か。(注)

    現に,強盗致傷はどんなに軽微な怪我でも
    初犯から一発実刑という逆の用意をしていた。
    殺人にはどうしてこんな配慮を用意するのか?

また,殺人罪の法定刑の下限を仮に懲役7年以上とした場合,
初犯の殺人未遂のときでも執行猶予が付けにくくなるではないか
と立法者は考えたのかもしれない。
(未遂の場合,法律上の刑の減軽で半分にできるが,
法定刑の下限が懲役7年以上だと,執行猶予は付けられない。)

    しかし,法律上の減軽の上で,情状酌量をも活用すれば,
    執行猶予を付けられなくもない。
    ・・・・本当にかわいそうな場合には,ですが。

    故意の殺人犯罪なのに,未遂だからと言って,
    執行猶予を付け易くなるように手配しておく理由はないと思う。

    しかも,未だにかすり傷1つの強盗致傷でも適用される法定刑の下限の懲役6年よりも軽いのはまったく理解できない。



最近,裁判員の死刑の裁決を,最高裁等が相次いでひっくり返した例があった。
それも最高裁特有のドグマに従って破棄した例。

ただその事案は,相当悪質で,重罪の前科もあるなど,
最高裁のドグマがもはや時代遅れではないかと思われた例。
それでも頑なにドグマに従い,
裁判員の決めた死刑判決を破棄したことで話題になった。

私は,こうしたドグマの一因になっているのが,
実は,殺人罪の法定刑の軽さだと思う。

もし殺人罪の刑罰の下限を10年以上にしたら最高裁のドグマは終わるかも。

    シリア難民問題を見ればわかるとおり,
    今は日本も,もはや単一民族ではなくなる時代に入った。

    伝統的な日本の姿を前提とするかのドグマが今後も有効だとは思われない。

      もし最高裁長官等の国の最も重要な方がテロ被害に遭っても,
      その事件の最高裁法廷(同僚の最高裁判事たち)は,例のドグマに従うのでしょうか。
      もちろん,一般平民も最高裁長官も平等で差別はありませんが,
      その同僚がドグマに従うのは何か事務的で冷たい印象を禁じ得ません。


    注)かつて親殺し等の尊属殺人の規定があった。
    今は廃止になったとはいえ,それは無期刑と死刑しか法定刑がないという本当に重罰だった。
    問題なのは,刑法がそれだけは廃止したが,その余は殆どいじっていないことだ。
    結局刑法全体の思想は変わっていないことだ。
    つまり,尊属殺人は重く,我が子を殺した事件は軽くてよいとの思想によって作られた古い古い刑法をそのままに,重すぎる尊属殺人の規定の方だけ削除した。
    卑属殺人を含む一般殺人罪の方は,背景となる考え方を再検討再構築していない。
    だから,今の時代に合わない。

                    -byフローラ法律・岡崎 from 2013.3.24-

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