731 夫も妻も離婚の訴えを起こしたら,どう判断されるか。

同じ夫婦で,しかも少なくとも同じ時点では,
結婚も1つだし,離婚も1つです。当然です。
(なお,同じ夫婦でも結婚と離婚を繰り返す場合もありますので,「同じ時点では」
となります。)


ところが,そうした1つの離婚について,例えば
夫が裁判所に離婚請求を提起し,
しかも妻も,離婚の反訴請求提起が起こす例もあります。
もちろん,いずれも受理されます。

    なお,例えば夫と妻が例えば同じ日等にそれぞれ訴状を裁判所に提出した場合で,
    しかも離婚裁判を担当する裁判官が複数いる場合
    別別の裁判官にそれぞれの事件が係属するということだけはさすがにありません。
    必ず一人の裁判官に集約されます。
    別別の裁判官の担任として係属させると,同じ夫婦の離婚問題なのに,
    判断がばらばらに,矛盾する内容になると困るからです。

    なお,1つの離婚を巡る2つの請求に関し,
    裁判所は,夫や妻のいずれかに対し,
    「相手が訴えを既に提起したので,あなたは取り下げなさい」とは言いません。

    実際,夫婦の一方の訴え提起して,相手にも訴状が送達された後,
    1,2か月も経ってから相手が反訴を提起することでも構いません。
    (ただ,如何に遅くとも一審の判決前にはするべきでしょうが。)



なぜ,このようなことが起こるのか。

それは,離婚訴訟は,離婚原因を掲げて提訴します。

早い話,夫の主張する離婚原因と,妻の主張する離婚原因は違います。
民法770条所定の同じ号でも,趣旨内容が違います。

つまり,夫は,妻の問題によって,離婚原因が生じ,だから離婚できると主張する。
妻は,逆に夫の問題によって,離婚原因が生じ,だから離婚できると主張する。

仮にそれぞれの出す『離婚原因』の項目の表題は同じでも,中身が全然違う。

だから,それを前提にする慰謝料請求や財産分与請求等も変わってくることも多い。
例えば,妻は,夫が原因で婚姻が破綻したから,500万円の慰謝料を寄越せ,
夫は,妻が悪いのだから,300万円の慰謝料を支払え
となります。


ですから,例えば
実際は妻の主張するとおり,夫が不貞をして婚姻関係を破綻せしめたのに,
夫が妻の家庭内の態度が悪いから破綻したと言い張った場合で,
後者の主張が通らなかった場合,
裁判所が最もきちんとしたやり方を取るなら,
妻の離婚請求は認容,夫の離婚請求は棄却
という判断になります。

両者の請求について,離婚させること自体は同じでも,
一方は離婚請求認容,他方は離婚請求棄却という判決主文を掲げるのです。

私は,裁判官の大先輩からは,むしろこうした判断の方が正確で正しいと教わりました。

    確かに,例えば,有責配偶者からの離婚請求は原則認められません。
    そうであれば,両方の離婚請求が競合した場合において,
    夫婦の一方が有責配偶者である場合,
    その請求は明示的に棄却するのが筋になるかもしれません。

ただ,離婚は1つだから主文も1つでよいとする見解もあるようです。

しかし,私どもが心配するのは,
夫婦の離婚の場合,ぱっと見だけで,
「犬も食わない喧嘩」,「どっちもどっち」
という発想を安易にしていないか,です。

確かにそうした例も世の中全体では,実例として数多くあるでしょう。
ただ,二人の話し合いでも決まらず,
そして離婚調停を経ても合意には至らず,離婚訴訟になっているわけです。
しかも双方から,離婚請求を各打ち合う始末なのです。

「犬も食わない喧嘩」,「どっちもどっち」という言いぐさは
裁判所のお仕事としてみるかぎり,やや雑ともいえるかもしれません。

裁判所なのに,面倒臭がって,しっかりとした分析整理なくして,
大雑把に判断するということがあっては拙いわけです。

夫婦両方から提訴された場合に,離婚は1つなんだからとの理由で,
どちらの請求を認容したのか,判決主文の上で分からないのは,
大先輩がいうとおり,私はやはり拙いと思います。

                    -byフローラ法律・岡崎 from 2013.3.24-

カテゴリー:夫婦家庭裁判所家事事件

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