726 覚せい剤事犯の保釈―覚せい剤は一人で出来る犯罪ではない(準共犯)!?

覚せい剤の自己使用の罪は保釈が当然でしょ,みたく思っている被告人がいます。
果たして,本当にそうでしょうか。

覚せい剤の自己使用の罪は,
尿の検査結果-覚せい剤反応の結果が最重要証拠になります。
これがあれば,ほぼ100%有罪になる。

しかも被告人自身も覚せい剤使用を認めているとします。

    この場合,被告人の方からすると,
    「罪を認めている上,
    尿も提出しており,争いようもほとんどない以上,
    保釈は認められて当然ではないか」
    「誰に迷惑かけることがあろうか」

    というわけです。



しかし,私どもからすれば,そうそう簡単ではないよと答えます。

まず,第1に,覚せい剤は繰り返す方が多いので
過去に覚せい剤事犯で裁判を受けていれば原則として
刑訴法89条3号の「常習」にあたり,保釈不許可事由があることになります。

仮に過去逮捕等されていなくても,やはりこれを繰り返していれば
同様に,前記保釈不許可事由があることになります。

そして前者の場合,今回の罪で実刑になる可能性がある場合
(前回の事件から10年以上経過してないとき,
とりわけ執行猶予中になしたとき)
は裁量保釈も認められないことにもなります。

    裁量保釈とは,保釈不許可事由がある場合でも,
    裁判所の裁量により,特に保釈を許して貰えることがあるという場合です(刑訴法90条)。
    保釈金として積む金額がこの裁量に関係することもありますが,
    しかしそれが決定打になるのではありません(この点も誤解が多いかもしれません。)

後者の例では,今回の罪が初犯であっても一応不許可事由に該当するので,
何か不安な要素があれば,裁判所は裁量保釈は認めてくれません。


第2に,今回の覚せい剤自己使用の罪自体は認めていても,
覚せい剤の入手先を言えない方が現にいらっしゃることです。

覚せい剤は,何もないところからは生み出せません。
必ず誰かから入手してくるということになります。
注射は一人では打てますが,入手の点も含めると一人ではできません。

    その入手先とは,
    高速道路で商売をしているイラン人の密売屋さんかもしれませんし,
    比較的近い友人かもしれません,
    あるいは,怪しい組織の方かもしれません。

要は,譲り渡してくれた人とは,ある種の共犯関係のような話になります。

それで,準共犯ともいうべき,譲渡人のことをいえないと,
保釈した場合,譲渡人と連絡を取り合うのではないかとされ
刑訴法89条4号の「罪証隠滅」のおそれがある場合に該当することにもなります。

そうなると,裁判所としては,理論上は保釈却下が可能になりますので,
残るは裁量保釈をするかどうかとなり(刑訴法90条),
裁判所が少しでも不安視する事情があると,やはり保釈を認めないわけです。

    こうした法解釈に疑問を持つ方もいるでしょうが,
    なかなかきれい事ではすまないといいますか,
    理屈や理想どおりにいく話ではないと思います。



もちろん,初犯であれば,裁判所も鬼ではないので,
刑訴法89条3号(常習性),4号(罪証隠滅)の点を盾に
何が何でも保釈は許さないということはないかもしれません。

しかし,あくまでも裁量保釈なわけですので,楽観視はできません。

過去に同種の罪があって,今回の罪で実刑が予想される場合は,
保釈はしてもらえないと思われた方がよいかと思います。


繰り返しますが,
覚せい剤は,入手先の協力がないとできないので,
そうした人間関係こそが問題視される場合もあるわけです。

    犯罪はどれも悪いのですが,
    覚せい剤の罪は,完全純粋に1人でする罪ではないことは,留意する必要があります。

とりわけ本人を善意で心配して監督してくれる方(親等)からしてみれば,
入手先は一体どんな方なのかは,本来当然に心配になる事柄です。



ですから,被告人等で,保釈を当然視される方には
「そんなにアマイものではないよ」
と説明するのです。

いずれにせよ,よく反省して早く,覚せい剤から足を洗い,
新しい人生を送って欲しいと思います。

    刑訴法第89条
     保釈の請求があったときは次の場合を除いては、これを許さなければならない。
    1(略)。
    2(略)。
    3被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
    4被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
    5(略)。
    6(略)。

    第90条(裁量保釈)
     裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる

                    -byフローラ法律・岡崎 from 2013.3.24-

カテゴリー:刑事問題弁護士

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