708 賃貸借等における物的信頼関係と人的信頼関係

賃貸借等の契約解除は
法律的にも俗にも,「信頼関係の破壊」が重要な要素になります。

ところで,ドイツの法律家の分類では,これを,
①物的信頼関係と②人的信頼関係の概念に分けて考えるようです。
(星野英一「借地借家法」有斐閣)

    賃貸借の場合であれば,
    ①は,賃料をちゃんと毎月支払っているか
    きめられた用法に従って,無断改築等をせずに,大事に使っているか
    等です。

    ②は,①をきちんと履行していてもなお,例えば,
    違法なことをする人が借り主であるとか
    近所づきあいが意地悪すぎるとか,
    近隣の大家さんに余りに礼儀を失した態度を取るかの場合です。



これらの違反の法的効果としては,
①の場合は,ほとんど当然に契約解除が認められるのに対し,
②のみの場合には,よほどの事情がないと解除は認められないと言われています。

賃貸借は,賃借人の生活の基盤を確保する必要があるので,
①さえきちんとしている方であれば
人間づきあい等がヘタで気が利かないために,
近所に迷惑な感情を抱かせる程度では解除は難しいと言われています。

    これに対し,
    ア 刑罰法令に触れる行為をする入居者の場合
    (ex.オレオレ詐欺のアジトだと契約後に判明したとき)
    イ アパートとかの場合で,そうした入居者がいるお陰で,
     他の入居社が次々に退去するようになったり,
     新しい入居者が決まらなくなった場合等
     では,①をきちんとしていても,契約の解除は認められるのではないか



話は変わって,
弁護士に法律事務処理を委任する場合はどうでしょうか。

委任契約は,民法上は,いつでも解除できるとされ,
ただ,契約の相手方に不利益な時期にしてはならないとか,
損害を与えた場合には損害賠償をしなければならないとされる程度です。

とはいえ,弁護士の仕事の性格上,医師の仕事ほどではないにせよ,
無闇やたらに解除すれば,社会的に非難されるかもしれませんので,
賃貸借並に,信頼関係の破壊の思想を入れて対応することが多いかと思います。


【上記①違反の場合】
受任手数料を取り決めたのに,なかなか支払わない,
法テラス活用の合意がなされた上で,既に訴訟活動に着手しているのに,
法テラス申請の添付書類やまさに訴訟活動に必要な書類を持参交付しない等の場合は,前記①の物的信頼関係は破壊されたと言えます。


【上記②違反の場合】
仮に①はクリアされていても,
質問や連絡に対し回答がないとか,
訴訟活動に必要な,本人の知っている情報の開示に応じないとか,
虚偽の事実を述べたり(→弁護士がそのために裁判所で恥をかかされる),
依頼した仕事の推進や方針決定及びその協議等に協力的でないとき
弁護士業務へのご理解が余りにも欠落され,業務の体系を壊しかねないとき(=他のお客様の迷惑になるとき),
は,前記②の人的信頼関係が破壊されたといえると思います。



【説明の努力義務はどちらにもある】
弁護士との委任契約について,
弁護士だけが依頼主に説明責任を持っていると考える方がいます。

しかしそれは実は正確ではありません。

    弁護士は,確かに専門家としての説明責任を負っているとしても,
    前提となる事実を明らかにしてもらえなかったり,
    その解明の協議検討に協力的でないときは,
    弁護士が説明義務を果たそうにも果たせないからです。



例えば,民事訴訟では,依頼者である当事者本人には,
事実に関し,代理人弁護士の発言を訂正する権利が認められています。

このことからも明らかなように,訴訟活動等を委任する以上は,
弁護士からの事実の問い合わせには依頼者は真摯に対応しなければなりません。
それがなければ,弁護士が訴訟で間違った事実関係の主張をした場合,
(例えば依頼者が出頭しない場合)弁護士も依頼主も困ることになるからです。

家事・離婚調停等では,当事者本人に出頭義務が課せられています。
当事者の人格や意向をまさに重視した対応をしなければならない場面があるのです。
そのため,弁護士も,本人にどうしても調停出頭して貰いたい場面が出てきます。
従って,それをお願いしたとき,理由にならない理由で出頭されないときは,
調停委員や弁護士に対し本人が説明を尽くしていないことになるかと思います。

    弁護士委任契約も契約である以上,
    お互い信義誠実の原則の適用があることを忘れてはなりません。
    ですから説明義務や説明の必要は,契約当事者の一方にのみ,
    つまり弁護士のみにあるのではありません。

                    -byフローラ法律・岡崎 from 2013.3.24-

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