659 少年の交通事故記録の供述調書は民事賠償事件には使えない。

18歳以上の少年である場合,自動車運転免許を取れますが,
交通事故を起こすと,家裁で少年事件審判を受けます。

    少年でも,無免許運転罪なら重い処遇がなされたりしますが
    (暴走族等や生活が乱れている場合は少年院送致等も)
    普通に高校を卒業して,毎日真面目に働いている中での
    有免許で,物損を中心とする交通事故(しかも初事故)であれば
    交通講習程度で,審判が終わります(不処分等)。

こうした有免許少年,しかも初事故(物損等)少年の場合,
警察が捜査した少年事件記録は極めて簡便なものが多いです。

実況見分見取図も,手書きのラフスケッチだったり,
つまり車同士の距離や道路状況について数字データの記載がない。
要するに,厳密に事故現場や車の位置関係等を計測していない。

衝突事故現場や衝突した2台の車の事故状況の写真等による報告書もない。

しかも供述調書も,両方の車の運転手につき,1頁程度。
それも,各人の供述調書双方に
「この事故で私が不注意だった点は」との定形文言が印刷されており,
それに続けて,記載をするようになっている。

    つまり,事故に遭った以上は,運転手には何らかの不注意があったはずだ
    との前提で,とにかく各人の「不注意」を書かせるようになっているという意味だ。



このような少年事件記録が,
損害賠償に関わる民事訴訟事件に使えるかというと,それは難しいでしょう。

事故に遭った両方の車にき過失割合が何対何かという厳密な認定の資料に用いるのは困難だ。

そうした過失割合の厳密な認定は,やはりなんと言っても,物証です。
つまり事故現場や衝突の態様を車の損傷内容や程度を,客観的な写真等で示す必要がある。


ところで、少年事件の交通事故の場合,
何故,警察の交通事故の調査は,かくも軽いタッチなのでしょうか。

それは,少年事件が,過去の事件の責任原因の厳格な確定というよりもむしろ,
将来に向けた指導に重きを置いているからです。

    仮に,分かりやすくするために,
    民事損害賠償で過失割合が8対2で,その2の方が少年だったとしましょう。

    それでも少年には2割の過失があるわけです。
    しかも今後将来重大事故に遭ったら彼の人生も終わります。
    少年=若人に対し,将来の指導的見地から,
    広い意味での過失(旧過失論に近い意味での「過失」)があったとして,
    こうした機会を捉えて指導をするということは間違いではありません。



つまり刑事罰的に厳格な責任認定をするときは,新過失論で,
少年事件は,将来に生かす観点から,旧過失論的なものを採用することはあり得ます。
旧過失論(的な発想)は,今では古くなったとはいえ,
子どもに「くれぐれも運転は注意しろ」との意識を促すのには有効です。

このように,自動車事故(物損)を起こした少年に対して,
何らかの不注意があったことを前提に,
定型書式を警察が用いて,いわば簡便処理するのも理由があるのです。

少年事件として捜査する場合,先の例で少年にたとい2割であっても過失がある以上は,この少年に交通講習を受けさせるべく家裁に書類送致することはあり得ます。
(誰から見ても明らかに少年の過失が完全に0割合なら別でしょうが。)

    その際,交通警察は,何も,厳密な法的な責任,
    況んや民事賠償責任の有無やその程度等を確定させておく必要はないのです。

    むしろ,厳密過ぎる捜査認定は,少年の保護育成には好ましくないかもしれません。
    近い将来大事故を起こしたら元も子もありません。
    事故を起こした以上は,何らかの指導に結び付けたいのです。

民事損害賠償における過失割合の議論には,上記定形の供述調書は使えないと思って置いた方が良いでしょう。

                    -byフローラ法律・岡崎 from 2013.3.24-

カテゴリー:少年事件民事裁判交通事故

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