641 弁護士法23条の2照会と公務員の守秘義務

被相続人の財産情報を調べようと,相続人の依頼を受けて調査を始めた。

公務所が現有する証拠であれば,弁護士法23条の2の照会が良かろうと判断した。
弁護士法による照会は,弁護士会がその適否や問題点について検討してフィルターをかける。

弁護士としては相続人が申し立てるよりも更に慎重な手続を履践していることになる。
なお,弁護士会の審査料として税込5400円が掛かる。


でも,驚くことに,お役所の反応は,むしろ正反対なのだ。
事前問い合わせをすると,公務員の守秘義務を盾に断りたい様子(後述)だが,
どうやら,むしろ相続人が来てくれる方が有り難いご様子なのだ。
それにはたまげた。

なお,言っておくが,相続人が被相続人の情報を知りたい場合の話だ。
それを外れた一般の場合はまったく想定していない。

    弁護士法による照会は,もちろん相続人の委任状を付し,相続人であることの証明をし,その利用目的方法に限定を付して,申請をし,弁護士会の審査が通る。
    目的外の利用・例えば当該資料作成の公務員に国家賠償請求する等の利用は認められない。
    もし目的外利用をすれば,弁護士の守秘義務違反で逮捕される。弁護士資格も剥奪される。

    しかしお役所の立場的には,弁護士法による照会の方を,公務員の守秘義務を理由にお断りしたい様子なのだ。
    弁護士関与事案だからこそむしろ断りたいわけだ。

    現に,裁判所からの調査嘱託でも,守秘義務を盾にして答えるつもりはないという。



多分,こういうことだと思う。
相続人本人の要請を無下に断るのはさすがに気が引ける。
元々はその親の情報だからだ。
しかも相続人が来たときには少なくとも相続人全員の承諾という要件を付せばよい。
提出する期限を厳しく制約をかけても良い。
お役所にとって,(杞憂だが)もめ事等は,最少限度になる。

しかし,相続人の1人が弁護士照会を用いた時,相続人全員の承諾が得られていない。
しかも裁判であるから,別の相続人には資料を提出することになる。
相手方の相続人が文句を言うかもしれない。
・・・・文句を言われる筋合いのないことだが。

裁判資料に用いられるからこそ,逆に紛争性が高くいやなんだと思う。
資料を出してくれた役所に迷惑を掛ける人がいるとは普通思えないが。

    しかも,相続を巡る事件は,家裁ばかりではない。地方裁判所に係属することもある。
    地裁の裁判は公開である。だから困る。
    弁護士照会を申請した弁護士,そして提出先の裁判所は,それぞれ秘密厳守になり,厳しい縛りがかかるから問題は少ない。
    しかし地裁の裁判は公開だから,相手方当事者(相続人)のほか,新聞記者等も事件の傍聴等もできる。

だから,公務員が我が身等への危険(杞憂だが)を恐れているのかなと。
相続人が来た時以上に,相続人の依頼を受けた弁護士を警戒したり,その弁護士(守秘義務のある)を相続人未満に扱う理由がないからだ。
まして況んや裁判所命令をや。



本質的にいって,確かに今公務員が持っている情報だ。
しかし元々は誰の情報だったのか。そもそも一体誰からとってきた情報なのか
「俺が買った車をどうしてお前に乗せないといけないのか」という話ではない。
つまり,あかの他人の情報を下さいと言っている話ではない。

早い話,ある国民が自分の情報にアクセスするのに,公務員は守秘義務をもって抗弁できるはずがない。
ならば,その本人の地位を承継した相続人は?
しかも本人は既に亡くなっており,その本人の情報を,相続人が,あくまでも相続という目的の範囲で用いるだけである。

然るに,例えば相続人の代理人の弁護士に対し,まして裁判所の調査嘱託に対し,
守秘義務があるからだめだとのたまうのは,公務員の自己保身でしかない。
争いのある相手方の相続人等に騒がれると,公務員様にとって困ることはなんでしょうか。
公務員はクビにはならない,給与も下がらない。
そのことで出世が停まることすらもないと思われる,よほどのことでもない限り。

    仮に,裁判所に提出されてしまい,それを受け取った相手方当事者が恨みをもって公務員に国家賠償を提訴しても,棄却される。
    万一マスコミが騒いでも,この点は一緒だ。
    普通マスコミはこのような個人の相続案件はチェックしない。報道の価値がない。

    もし提出された情報に誤りがあったとする。しかしそれでも国家賠償は難しい。
    それが相続裁判に影響するとは限らないからだ。

    っていうか,間違いは正されるべきであって,隠すことではない。
    少なくとも本人が見て正せる内容なら,相続人がしておかしいことではない。
    その被相続人の関係でする相続裁判で(これ自体は正当行為),開示された情報の中に間違いが発見されることが何百万分の1の割合で発生したとしても,そうした正当行為に関し必要な資料を公務員が隠す理由はない。
    ・・・・これは,例えば,新聞記者が役所に押しかけて,気になる芸能人の情報を探った上(=正当行為ではない),記載に間違いがあったからといって今度はその役所の非難を大いに書き立てることとも性格が異なる。

守秘義務をはき違えていると思う。
裁判を受ける権利が認められる中で,その前提での申立てだから。
裁判が公開(憲法82条)だから出せないとしたら,裁判を受ける権利(憲法32条)の保障を無視した態度だ。

以上は,各お役所によっても,解釈の幅の中で,取扱に差異が出ることかもしれないが,いずれにせよ,公務員の守秘義務でお断りされる可能性のある例題の1つである。

    日本は,本当にお役所天国だと思う。
    個人情報一般なら,いざ知らず(先の車の例と同じ),
    自分の親・被相続人の情報すら,相続人が満足にとれないのだから。
    しかも弁護士を特別忌み嫌うのだから,裁判所を忌み嫌うのだから。

    もう一度言う,そもそも一体誰の情報だったのか。

    開口一番,「弁護士さんなら,分かっていただけると思うのですが」
    ・・・・逆に分かる訳ないじゃないの,国民無視の自己保身にすぎない態度を!
      「むしろ,言葉を尽くして説明下さい。
       そうすれば,普通の日本国民は良心的なので分かりますよ。
       被相続人の情報を相続人として戴くのに『守秘義務がありますから』
       だけで理解は普通できないですよ。」

                    -byフローラ法律・岡崎 from 2013.3.24-

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