554 刑事事件の無罪記録は,国家賠償訴訟には用い得ない!?

刑事事件の弁護で弁護人が無罪判決を取ったとします。
その無罪になった事件の刑事記録は,例えば,検察官に対する国家賠償請求事件で用いうるでしょうか。

    もとより,国家賠償をしなくとも,無罪の場合は,国家補償を受けられます。
    ただ,その額は,以前に紹介したとおり,身柄勾留を受けたことに対して
    1日上限は1万2500円まで。
    1年間身柄の拘束があった場合,MAXでも1万2500円×365日=456万2500円
    ・・・・民間の平均給与程度にしかならない。
    それからすると,ちと安いですよね。

    せめて,公務員の平均給与の700万円くらいまで貰えたら文句ないのに。。。
    (ex.無罪になったかの厚労省の村木さんは,多分年収1000万円は超していたでしょうから,450万円は,彼女にとっては,はした金?)

    しかも,もし1万2500円から値引きされると,もっと少なくなるわけ。

    そうなると,足らず米として国家賠償請求することも一応考えられないではない。

ところが,実は,刑訴法は,国家賠償訴訟への利用は認めていません。
無断利用には一応罰則まであります。
第281条の4
被告人若しくは弁護人又はこれらであった者は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、次に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。
①当該被告事件の審理その他の当該被告事件に係る裁判のための審理
②当該被告事件に関する次に掲げる手続
 イ~ニ (略)
 ホ 再審の請求の手続
 ヘ~チ (略)
 リ 刑事補償法の規定による補償の請求の手続


刑事補償まではよいのですが,国家賠償請求は除外されているのです。

しかも,一般の方は驚くことかもしれませんが,
なんと刑事記録は,確定すると,検察庁に移管されてしまい,裁判所は持たないのです。
つまり,弁護士からすると敵?のもとに証拠があるわけ。
記録が裁判所に残っていれば,遙かに頼みやすいのだけど・・・・


そうなると,残る手段は,
①裁判所を通じて刑事記録の送付の嘱託を検察庁宛にかけてもらうしかない。

それでも検察庁が頑として出さないとどうなるか。
実は裁判所は強制力を持たないのです。

    場合によっては,出してくれても真っ黒けに黒塗りをされてしまい,全く意味をなさない場合もあり得るかもしれません。
    弁護士からすると嫌がらせ以外の何ものでも無いように思われてしまいます。

送付嘱託を検察庁が拒んだ時は,次は
②文書提出命令を裁判所に申し立てる。

この申立てを裁判所が認めてくれてもなお,検察庁が提出を拒んだら・・・・
その時はもはや提出させる術が完全になくなる。



一般の方は,このようなことを聞くと,びっくりしますよね,多分。

刑事補償と国家賠償の関係は,
交通事故で言えば,いわば,強制保険と任意保険のようなもの。
お互い関連しあっている部分があるはず。

    もっとも,文書提出命令の違反があると,命令自体の効果として,
    裁判所は、文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができるとはなってはいます。

    ただ,結局裁判所が文書の中身を見ることができないのに,申立人側が必ず有利になるとは限らないのが実際でしょう。
    見ていないのですから。



なお,上記条文の文言によれば,その反対解釈として,
刑事記録中,裁判所の証人尋問調書は,裁判所から謄写を許されるものですから,
この謄写分については制限はかからず,国家賠償請求の担当裁判所に提出できるはずだと思います。


なぜ,このような規定ができたのかといえば,やはり秘密保護があるかと思います。
刑事事件に必要だからこそ開示してくれた人の秘密等は守る必要があるかもしれません。
それで目的外使用を認めないというのだと思います。

    ただ,その人の関与があったからこそ犯罪嫌疑がかけられた場合もあるでしょう。

    これは単なる私見ですが,裁判の公開原則との関係で,
    裁判は公開だから誰でも閲覧できてしまうことを避けたいこと等は理解できますが,
    しかし制約のかけ方が酷いと,公平な裁判所にとっても見れなくしてしまい,
    裁判所の判断そのものに枠をはめることになる。秘密は守れても。。。

    私は,そもそも誰も傍聴にこないような裁判についてまで,
    必ず公開しなければならないなんてことはなく,
    秘密保持のためには,むしろ積極的に,
    当事者と裁判所以外の外野には記録を見せないよう公開制限をしたらよいと思う。

    証拠の提出制限がされると,裁判の結論さえが変えられてしまうかもしれない。
    必要なプライバシーを守ることと,このことは別物だと思うのですが。

                    -byフローラ法律・岡崎 from 2013.3.24-

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