438 無免許運転罪の立証と補強証拠法則

今では昔のことになってしまったと思いますが,
そして私自身も見たことはないのですが,
私の大先輩に言わせると,
次のような無罪事件が,昔は時々出たと言います。

無免許運転罪の無罪です。

    無罪は日本では殆ど出ませんが
    比較的出る(かつて出た)パターンを挙げますと,
    ①身代わり犯人(あとで仲間割れして真実が明るみに)
    女性の交通事故の責任を男が身代わりで被り,後に仲違い

    ②多数件の窃盗容疑で,1件だけ否認するが,あとは全部自白する例
    警察が,「これもお前だろ」で付けてしまった?

    ③無免許運転の検挙等におけるミス

今回のブログは③の紹介ですが,
先ほども言いましたとおり,現在こんなヘマ??は見ません。
古い先輩から聞いた話です。


無免許運転罪で処罰するには
ア 被疑者被告人が免許を持っていない事実(免許を喪失している事実)
イ 被疑者被告人が運転した事実
を立証しなければなりません。

しかも大事なのは,アイともに,被疑者被告人が自白しているだけでは駄目だということです。

要するに,自白とは別に,客観的な証拠による補強がなされなければならない。
これを補強証拠と言います(憲法38条3項)。

ここで,アについての補強証拠を忘れる人はまず居ません。当然です。
しかし,イについての補強証拠を忘れてしまうことがかつてはままあった。

つまりイについては,自白しかないことがあったわけ。

すると裁判所ですぱっと無罪判決になったんだと。

    イの補強証拠としては,例えばビデオテープとか,目撃証言(例えば警察官の現認等)が必要になります。



補強証拠の原則は,憲法38条3項:

    「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。」
    自白偏重の禁止です。

しかし,かつては何故間違いがあったかというと,おそらくですが,
最高裁判決で,自白した事実の全てが補強証拠で裏付けられる必要はないとしているからだと思います。

    つまり,無免許運転の自白がある場合,
    アの事実についての補強証拠がありさえすれば,OKなのではと思われたのかもしれません。
    しかも多忙を極める中,自白があるとついほっとして安心してしまうことは誰しもあるでしょう。

    しかしそういうわけにはいかないのです。



私は,先輩から聞かされたとき,そこまで重要なこととは思いませんでした。
当時,これを単なる知識として聞いていたんでしょうね。実践の話としてではなく。
だから,なんだこんなことかと,生意気ですね(汗)。
知ったかぶりだったんでしょうね(汗)。


でもでも,でもでも,無免許運転罪ではないが,
極めて似た図式・構造を持った悩ましい事件が立件されていましたよ。
事案は言えませんが・・・・。

要するに,無免許運転罪では,今では誰でも気をつけるようになっているが,
別の法律・別の犯罪では,やはり引っかかりやすいワナが待っているということです。

私は,その被疑者(自白)の説明を聞いて,「あっ」と思いましたよ。
無免許運転罪の例と一緒だと。構造が一緒だと。
アとイの各自白事実につき,それぞれ補強証拠がいる!と。


私の先輩は,当時刑事実務一筋30年以上の,しかも苦労人でした。
その方が,私が別の仕事をしている時にわざわざ中断させて,話をしてくれた話が,
無免許運転罪の補強証拠について,だったのです。
今はもう亡くなっておられます。


やはり役立ちますね。先輩の話は。ありがとうございました。

                    -byフローラ法律・岡崎 from 2013.3.24-

カテゴリー:刑事問題司法制度

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