337 依頼者を神とするのが弁護士!?

我々弁護士は,依頼者から,その大切なお金を戴いて初めて事務所経営ができます。
その意味で,依頼者は神であることは疑いがないことです。

しかも中には,事務所に打ち合わせにおいで戴くと,仕事の報酬はちゃんと戴いているのに,
毎回御菓子やお酒,嗜好品等をわざわざ買って持ってきて下さるお客様も,少なくありません。

こちらが報酬を何も請求してもいないし,規定上も戴く場面ではないのに,
「お世話になっていますから」と,
10万円とかの追加報酬金を突然戴ける,本当に神様のような依頼者もいます。


今回は,必ずしも,そういった神様のお話ではありません。

せっかく来て下さった依頼者は,基本的に良い人です。間違いないことです。
ただ,依頼者が必ず勝てるかどうか,依頼者の言い分がいつも正しいかは全く別です。

それは厳しい現実です。
裁判所も弁護士も当然知っていることです。

    中でも裁判所は最も冷淡です。依頼者との人間関係はなにもなく,ただ事件としてどちらの言い分が正しいかを検討するのみ。人格ではなく事件としてみるだけ。
    裁判所はいい人だから正しいなんて微塵にも思わない。



そんな中,15年ほど前,こんな弁護士に出会いました。

訴訟で,相手方当事者が法廷で尋問を受けており,これに対決する弁護士が反対尋問をしたのです。
事件の筋としては,その先生はいわば負け筋の依頼案件でした。
「あなたはどうしてこうも嘘ばかりつくんですか!」
「私の依頼者がそうじゃないって言っているのですよ!
だから,あなた,絶対嘘をついているでしょ。」

当時凄い弁護だなと思いました。究極の弁護だなと。
言ってみれば,その弁護士先生は,依頼者に気持ちで寄り添う方なのでそういう言い方をしたのでしょう。


でも,私も弁護士になってから思うのは,
表現方法はともかく,突き詰めると,究極はそれしかないのかな,と思います。

冒頭に述べた,本当の神様のような依頼者様であれば,
弁護士はおそらくどんなことでも,苦言等でも言えるかもしれません。
依頼者が,残念ながら裁判で負けるかもしれないこと,問題点があること等です。
そういう神依頼者の場合,まるで親友同士のように,相当立ち入った話までできます。

ところが,そういう方ばかりではありません。
依頼者の中には,実は,情報が思うように得られないこともあります。
そもそも仕事も忙しいとなかなか事務所に来て貰えず,打ち合わせや対話が不十分になったりもします。
来て貰えないではなく電話にもなかなか出て貰えず,しかも質問ばかりショートメールを寄越す人も居ます。

また誰しも,元々自分の不利益事実はなかなか言いたがらないものです。
大事な点にさしかかると,途端に「忘れた」といい,話をそらしたり,「もういいでしょう」と懇願されたり。
プライバシーの領域にかかると,必要調査事項でも,露骨に嫌な顔をされることもあります。

    依頼者が嫌がることは,彼が間違っているとしても,なかなか強い言い方はできません。
    「依頼してお金を払っているのは私なのに,なんでこんなにも責められたり,詮索されたり,不愉快なことを言われなきゃならないんだ」
    と思うことはむしろ普通です。
    ただでさえ,事件に巻き込まれて怒り,傷ついているのです。

また,残念ながら,依頼者にとって目に見える危険が迫っているわけではないことについては,
いくら念を押しても,やるべき事をやって戴けていない例もあります。
専門家が繰り返し言っていることは聞いて欲しいのに。。。

いずれにせよ,何らかの事情で細部まで情報の共有が不十分であるとか,
誰が原因かは別として,不明な点が多いのに裁判せざるを得ない時弁護士はどう対応すべきでしょうか。
依頼を断ったりできない特別の事情があるときです。

私はどちらかというと,お金を戴いてもはっきり言う方です。
(実は,言いたいから余り多くもらわないようにしているということもあります。)

ただ,どうしてもという場合,
最後は,結局,「依頼者がそう言っているから正しいのだ」
と述べて,突き進むほかないのかもしれません。
ただそう言って,適正手続に載っければよいのかもしれません。
その上でとにかく全力を尽くすしかないのかもしれません。


私が司法研修所で研修していたとき,ある地裁の所長が研修生に質問しました。
「研修を終えた後仮に弁護士になったとする。
事務所にとっては実はよい上客がやってきた。
ただ,証拠も何も持たずに,饒舌にしゃべった挙げ句,『先生,私勝てるでしょうか』と真剣に質問された。
この場合,弁護士としては,何と回答するのがベストか」

その所長曰く,
「模範解答は,『あなたの言い分どおりであれば,きっと勝てますよ』だ。」


以上のことは,依頼者が神ではないから,ではなく,むしろ,
依頼される側・弁護士が神ではないからこそ,起こる現象なのではないでしょうか。

カテゴリー:弁護士

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